なぜオーダーシャツなのか? 1
少しオシャレな人ならば、シャツを買うのに、セレクトショップや有名店などに行くと思うが、平均してそういったシャツは1万円位はしてしまう筈。安くても、5、6千円はするだろう。それも、高価なシャツになればなるほど、生地に耐久性がなくなるので、長持ちはせず、襟回りや、カフス廻りがスリ切れてしまい、嘆いている人も少なくはないと思う。
僕自身、そういったセレクトショップでファッションコーディネーターをしていた若かりし頃は、そういった既製品を好んで着ていたし、オーダーの良さを知らずにいたので、お気に入りのシャツほど、すぐに着れなくなって悔しい思いを何度もしてきた。
しかし、オーダーシャツならば1,000円程度で残布を使って新品同様に衿やカフスを修理出来る。残布がなくても白無地の生地でクレリックシャツにすることもでき、新しい一着として違う着こなしが出来る。
長い目で見れば断然安上がリなのだ。
※但し、シャツ本体の生地の傷み具合により、修理が出来ない場合もあるので注意!
ダサいというイメージも、会社の上司や、電車の中で見る年配のシャツを見て感じるところが大きいと思うが、こだわって作ったオーダーシャツは、セレクトショップで売っている海外の有名メーカーのシャツよりも身体にフィットし、着てみると決して引けを取らない。それどころかもっと格好良い。
僕は「シャツがキチッとしていれば、スーツもより良く見えるものだ」と考えている。
逆にスーツが高価な物でもシャツが悪ければ、スーツもそれなりにしか見えてこないから不思議だ。
変な話、4、5万程度の安めのスーツでも(安ければ何でも良いとは思わないが...)、アイロンをバシッと掛けたシャツ+ネクタイさえシッカリしたものを着るとオシャレに見えるので試して欲しい。 靴や鞄といった小物類の手入れも怠りなく!
このアイロンを掛けたバシッとしたシャツを着る為には、クリーニング店等には出さず、自分で洗ってアイロンを掛けてみて頂きたい。そうすることで、オーダーシャツと既製のシャツの違いがハッキリ判る筈である。
実は、オーダーシャツはアイロンが掛けにくいのだ。
何故ならば、オーダーシャツは立体裁断をしているため身体にはフィットするが、平面のアイロン台にはフィットする筈はない。当然のことである。
自分で洗い、アイロンを掛けるのには意味がある。
下手なクリーニング店に出すなら、自分で洗った方がシャツも長持ちがする。洗い方も洗濯機に入れて良いが、ジーンズではないのだから、ちゃんとネットに入れて欲しい。アイロンも、ボタンが熱で割れないようにボタンの上は外してアイロン掛けをおこなって頂きたい。
実は売場に訪れ、苦情をおっしゃる方の多くの原因はクリーニング店にある場合が多い。
『生地に張りが無くなった』、『衿が縮んだ』、『ボタンが割れた』、『衿が跳ねるようになった』など、これらの原因はまだ乾ききらないうちに、高温でプレスしたり、乾燥機で乾かしたりするためである。大量に仕上げなければ追いつかないといえ、納得がいかない。
自宅に乾燥機能のついたドラム洗濯機があり、いらなくなったニットがあれば是非試して頂きたいところだが、濡れたニットを乾燥機に掛けるとどうなる?
答えは、圧縮ニットになってしまう。袖も丈も1廻りも2廻りも小さく縮み、着れたもんじゃない。
生地のしなやかさも無くなり、ゴワゴワで毛玉だらけになってしまう。
綿のシャツにも同じことをすれば、同じ様な状態になるのは当然のこと、衿や袖には芯地も入っているのだから、剥離してしまうのは目に見える。良い生地ならばシルクの様にデリケートなので尚更それが顕著に現れてしまう。
電車でよく見る年配のサラリーマンが着ているシャツがダサく見える訳の一端もここにある。
必要以上に糊付けされ、紙のようにゴワゴワで、広げた新聞紙のように不要な個所にキッチリ折り目のあるシャツが格好良く見える筈がない。シャツ生地は紙ではない。夕方にはシワが入って当然。普通に仕事をしたある程度のシワならばそれも一つの味だと思う。
この自分で洗う。アイロンを掛ける。といった簡単なこだわりを持って頂ければ、既製のシャツでも長持ちする。
かなり脱線してしまったが、売場でオーダーシャツを作る際にもこだわりは必要だ。
衿の高さ、カフス巾、衿の開き具合、剣先の長さ、胴回りや、袖付けのゆとりなど、こだわるところは沢山ある。こうしてこだわって作ったシャツは世界であなただけの一着となる。
しかし、同等の価格の既製のシャツより長持ちして、オシャレならば。。。
一着でも良い。作って見る気にはならないだろうか?
そのこだわりを養うための手助けが出来れば、アパレル業界を辞めた顧客の立場とはいえ嬉しい限りである。